英国でSkilled Workerビザの下で就労していると、より良い条件を提示する企業や新たなキャリア機会から声がかかることは決して珍しくありません。もっとも、このビザは特定のスポンサー(雇用主)に紐づいた在留資格であるため、日本のように単純に「転職」する感覚で動いてしまうと、在留資格の維持に重大な影響が生じるおそれがあります。転職を検討する際には、英国の移民規制を十分に理解したうえで、慎重に手続きを進めることが不可欠です。
Skilled Workerビザ保持者は転職できるのか
Skilled Workerビザ保持者であっても、原則として転職は可能です。ただし、ここで重要なのは、単に勤務先を変更するのではなく、「新たなスポンサーを前提として、新たなSkilled Workerビザ申請を行う必要がある」という点です。すなわち、現在のビザを発給した企業ではなく、転職先企業が新たなスポンサーとなり、その企業名義で新しいCoS(Certificate of Sponsorship:スポンサーシップ証明書)が発行されなければなりません。
最近の制度の構造上、一部のケースでは必ずしも(change of employment(雇用先変更)としての申請を要しない場合もあります。しかし、自己判断で申請を省略したり、不適切なカテゴリーで申請したりすると、現在の在留許可が取り消されるリスクもあり得ます。したがって、個々の事情に照らして適切な申請手続が何かを専門家が精査することが極めて重要です。
転職先にスポンサーライセンスがない場合
転職先の企業にSkilled Workerスポンサーライセンスが付与されていない場合、その企業で直ちに就労を開始することはできません。まずは当該企業が英国当局に対してスポンサーライセンスの申請を行い、認可を受ける必要があります。スポンサーライセンスの審査には、通常、数週間程度を要するのが一般的であり、案件によっては優先審査サービスを利用して処理期間を短縮できる場合もあります。
スポンサーライセンスが承認されて初めて、転職先企業はCoSを発行することができ、そのCoSに基づいて申請者がSkilled Workerビザの変更申請(change of employment)を行うことが可能となります。そのため、実際の転職時期、現在のビザの有効期限、転職先企業におけるライセンス申請および承認までの見込み期間などを総合的に勘案し、全体のスケジュールを慎重に設計することが重要です。
同一企業内で職務内容が変わる場合
必ずしも他社への転職だけがchange of employmentの問題となるわけではありません。同一企業に在籍し続ける場合であっても、職務内容やSOCコードが変更されるケース、あるいはこれまで旧Shortage Occupation List(現在のImmigration Salary Listに相当)に基づく職務で就労していた方が、一般職のコードに変更されるケース等では、新たにビザ申請が必要となる場合があります。
これとは逆に、職務の本質的な性質が変わらず、SOCコードにも大きな変更がなく、給与条件も引き続き規定を満たしている場合には、change of employmentとしての新規申請を行わずに内部異動が認められることもあります。ただし、この判断には、詳細な職務記述書、適用されるSOCコード、給与条件等を総合的に検討する必要があり、文面だけで一概に結論を出すことは困難です。そのため、人事部門の担当者と移民法の専門家が事前に綿密に検討しておくことが望まれます。
いつ、現在の勤務先を退職すべきか
転職を検討される方から最も多く寄せられる質問の一つが、「いつ退職するのが安全か」という点です。Skilled Workerビザ保持者は、一般的には新しいSkilled Workerビザへの変更申請を提出した後、その申請が許可されるまでの間、引き続き現在のスポンサーの下で合法的に就労を継続することが可能です(もちろん、現行の在留許可が有効であり、ビザの有効期限内に適正に申請していることが前提となります)。
他方で、新たなビザ申請が許可される前に、原則として転職先企業のもとで就労を開始することは認められません。また、現在のスポンサーとの雇用関係が終了すると、移民法上、内務省が在留許可の短縮(curtailment)を行う可能性が生じます。そのため、実際の退職日を決定する際には、新しいビザの許可時期、新しい勤務先での就労開始日、既存ビザの有効期限を総合的に踏まえ、戦略的に判断する必要があります。
Change of Employment申請時の主な要件
Skilled Workerビザにおけるchange of employment申請の基本的な枠組みは、初回のSkilled Workerビザ申請時と概ね同様です。新たなCoSが必要となり、そのCoSに記載された職務内容および給与が定められた基準を満たしているか、また職務レベルが所定のスキル水準以上であるかが審査されます。
英語能力要件については、通常、初回申請時に既に要件を満たしている場合が多く、変更申請で改めて立証を求められないことも一般的です。しかし、個々の事情によっては例外もあり得ますので注意が必要です。さらに、英国入国から12か月未満の申請者については、生活費資金の維持要件の充足状況や、スポンサーがCoS上でその負担を保証しているかどうかも確認しなければなりません。申請者に帯同家族がいる場合には、家族の在留延長の要否・タイミング・費用負担なども併せて一体的に設計することで、実務上の効率性が高まります。
処理期間、費用、在留期間等に関するその他の情報
Change of employment申請は、原則として標準処理スキームに従って審査され、通常は数週間程度の審査期間を想定するのが妥当です。案件によっては、迅速審査サービスを利用することで、より早期に結果を得られる場合もあります。
ビザ申請手数料やIHS(Immigration Health Surcharge:移民医療附加料)についても、基本的には初回申請時と同様に発生し、就労期間(3年以下か3年超か等)によって金額が変動します。Skilled Workerルート自体には通算在留可能期間の上限は設けられていないため、要件を満たし続ける限り、転職を含む延長が認められ、長期的には永住許可(ILR)取得へとつなげていくことが可能です。
転職後の永住許可(ILR)申請のタイミング
現行規定では、Skilled Workerルートで永住許可(Indefinite Leave to Remain:ILR)を申請するためには、原則として5年間の連続した合法的在留期間が必要とされています。この期間中、直近の12か月ごとに180日を超える海外滞在があってはならず、Life in the UK Testの合格、継続的な雇用の真実性、スポンサーライセンスの維持、申請時点における給与基準の充足等が求められます。
転職を行ったからといって、それまでの5年間の連続性が全てリセットされるわけではありません。ただし、どのルート・どのビザをどのように組み合わせてきたのか、各期間が連続在留要件を満たしているか、途中にブレイク(在留の途切れ)がないか等を詳細に確認する必要があります。加えて、将来的な制度改正(例えば、永住許可の要件強化や必要在留期間の延長等)についての議論もあるため、永住許可取得を視野に入れている方は、転職を計画する段階から永住戦略まで含めて総合的に検討しておくことが望ましいと言えます。
コンサルテーションのご案内
Skilled Workerビザ保持者の転職は、単なるキャリア上の選択にとどまらず、スポンサー変更および在留資格維持という法的問題と密接に結びついています。新たな雇用主がスポンサーライセンスを保有しているか、適切な職種コードと給与水準が満たされているか、申請のタイミングと現在のビザ有効期限との関係、さらには将来的な永住許可取得の計画まで、総合的に検討することで、安全かつ効率的な転職戦略を構築することが可能となります。
適用される具体的な規定や最適な戦略は、申請者ごとの事情によって大きく異なります。実際に転職をご検討中の方は、個別事情を踏まえたうえで、ぜひ専門家による詳細なアドバイスをお受けになることをお勧めいたします。
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